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「被災した時間 -3.11が問いかけているもの―」(中公新書)

被災した時間―3.11が問いかけているもの (中公新書 2180)

斎藤 環 / 中央公論新社



この本を手に取った時点で矛盾しているようですが、副題の「3.11が問いかけているもの」の中の「3.11」という書き方、某SNSで議論になったように、あまり好ましく思っていません。
この本の主題と副題の組み合わせにケチをつけるようですが、「被災した時間」は「3.11」だけではなく、それからずっと。それから今日まで続いているわけだし、これから先も続いていきます。

私は神戸市長田区で阪神大震災に遭った時、少なくとも1年間は生活を立て直すのに必死で無我夢中、そしてその1年後に被害が大きくなかった西に引っ越しをしたのですが、その後は「被災地を見捨てた」という罪悪感とぽっかりとした空虚さだけが残ったような気がします。
家族、親せき、知人に亡くなった人がいなかった私でさえそうなのだから。

ただ、被災した人も被災地から遠く離れているけれどそれを今日のような発達したメディアで毎日のように被災状況をも目の当たりしてきた人たちも、刻一刻と心の中は変化してきた。
時に辛辣な言葉を表現するような心境にもなったし、
よくよく後で考えてみると無神経な言動に走った人たちもいた。

人間の生活ってそんなものなんだ。

この筆者も地震発生数週間後、結構キツイ言葉を新聞コラムに書いてきたとのこと。
あとでその反省の弁も書かれているけれど、知識人と言えどもそうなんだなぁ。

この本のまえがきに、関東大震災の後被災地を歩き、悩み、迷い書き上げた田山花袋が紹介されていますが、人間の感情は理路整然としてないし、田山やこの筆者のように右往左往していて然りでしょう。リアルです。

ましては今回の震災は地震だけではなく、津波、原発事故と次々と信じられない事態が起きたのだから。
そして私たちは後でまたその右往左往ぶりを反省するようになっているのでしょう。
by haru-0425 | 2012-09-07 20:32 | 読書

13歳女児と8歳男児に鍛えられているWM。


by haru-0425
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